鼠径ヘルニア

今回は、鼠径(そけい)ヘルニアという病気についてご説明します。
鼠径ヘルニアは、足の付け根部分(鼠径部)の筋肉に隙間が生じ、お腹の中の臓器や組織(脂肪、膀胱、腸、子宮など)が飛び出てしまった状態をいいます。先天的に鼠径部に隙間があって起こる場合と、事故などによる外傷で後天的に起こる場合があります。

 

 症状 

一般的には、ヘルニアが発生しても痛みを示すことはなく、腫れ以外の症状は認めません。
隙間が小さく内容物が少量の場合には、長期にわたってご家族も気づかずに過ごしていることもあります。
しかし、飛び出たヘルニアの内容物がヘルニアの穴に締め付けられると痛みが生じ、食欲や元気の低下、嘔吐などの症状がみられるようになります。ヘルニアの内容物によっては尿が出にくくなったり、腸が壊死してしまったりすることもあり、生命の危険につながる問題となります。

 

 診断 

触ってヘルニアの穴を確認し、飛び出ている内容物を腹腔内に戻すことができればそのまま診断できる事もあります。飛び出ている内容によっては触診のみでの判断が難しい事もあるため、その際はレントゲン検査や超音波検査などが必要になります。

↑鼠径ヘルニアにより鼠径部から腸が飛び出している症例のレントゲン画像

 

 治療 

無処置で異常が生じないこともありますが、だんだんと隙間が大きくなり症状を伴うようになることがありますので、基本的には無症状の場合も外科手術による整復が推奨されます。

 

 予防 

予防は難しい病気であるため、症状が生じる前に早期発見、早期治療をすることが大切になります。
一度の身体検査で発見する事が難しい事もあるため、定期的に身体検査を受けましょう。

この病気で来院されたご家族は、お腹のあたりでなにか出たりひっこんだりしている・・・、お腹の所に腫瘍ができているかもしれない・・・、といった相談で来院されることがあります。
気になることがあればご相談ください。

獣医師 坂井