治らない犬の外耳炎

犬の外耳炎の治療に力を入れている、泉南動物病院 皮膚科担当獣医師の横井愼一です。
今回はアメリカンコッカースパニエルの外耳炎のお話です。

 

症例

今回ご紹介する症例はアメリカンコッカースパニエルの11歳 メスのアジュンちゃん。

若い時からたびたび両耳が外耳炎になり、最近では薬を点耳しても良くならないとのことで、かかりつけ医さんからの紹介で来院されました。
左右の外耳炎が認められ、元気がなくずっと首を振っているとの事。
診察室に入ってくると、酸っぱいそして臭い匂いが充満するほどの異臭… 耳垢をぬぐうとヌルヌルとこんな感じです。

このヌルヌル耳垢はバイオフィルムが形成されている証拠。
バイオフィルムとは微生物の集合体で、台所や、排水溝に出来るあのヌルヌルと同じものです。
歯周病の原因となる歯垢もこのバイオフィルムの一つで、これが形成されると菌が塊を形成しバリアとなるため、薬剤や体内の免疫系が作用しにくい状態になります。
かかりつけ医さんで行った細菌培養検査では緑膿菌も存在し、もう使える抗生物質がないとの結果でした。
ひとむかし前なら、もうこの外耳炎は治らないから、あきらめて一生定期的に耳のお掃除を提案するか、外科手術で耳を取り除こうとしか説明できなかったのですが、今はオトスコープ(耳の内視鏡)という武器があります。

 

検査・治療

後日、麻酔をかけてCT撮影をしたところ、幸い中耳炎はなさそう。

オトスコープで外耳道を覗いてみると…
左右の耳道が通常の1/3程度まで狭くなっており、外耳道はまるで鍾乳洞のようにポリープがいっぱいでボコボコ腫れていました。

そこで、外耳道や鼓膜にこびりついた耳垢を丁寧にはがしていき、繰り返し洗浄しました。そして、ポリープはひとつずつ半導体レーザーで、焼いて取り除きます。

 

経過

1か月後の検査では、左右の外耳道はほぼ以前の大きさに戻り、膿もまったく出なくなりました。
彼女自身とても元気に活発になったとのことです。
しかし治療はこれで終わりではありません。
正常な耳道に戻ったわけではないのです。
膿は止まっているものの、耳道内にはまだポリープは残っていて、いつ再発してもおかしくない状態です。

特にアメリカンコッカースパニエルは、他の犬種より耳垢腺の働きが活発で、お手入れや投薬が抜けてしまうと、あっという間に慢性外耳炎に逆戻りです。今後は定期的な診察と継続した治療が、再発を防ぐために大切になります。

治らない犬の外耳炎の原因はさまざまです。手術で耳の切除を考える前に、一度当院へご相談ください。

皮膚科担当獣医師 横井愼一