猫カビ(皮膚糸状菌症)について

今回は猫に多い皮膚病のひとつ、皮膚糸状菌症について説明します。

○どんな病気?
真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌が動物の皮膚や被毛、爪などに侵入、増殖することで発症します。猫の原因菌のほとんどがMicrosporum canisという菌種で、被毛に生育する菌は感染源となり、他の動物や人へも感染します。
猫は特に顔、耳、四肢端に多く発生する傾向があります。症状は赤みやぶつぶつから始まり、炎症が広がると赤みが円形に広がり、「リングワーム」を形成します。

↓猫ちゃんに感染した例。



↓人に感染すると「リングワーム」と呼ばれる皮疹が生じます。


○どんな検査をするの?
皮膚糸状菌症の診断にはゴールドスタンダードな検査は存在しないため、その症状に加え、さまざまな検査を組み合わせて診断します。
1.)ウッド灯検査
 Microsporum canisが感染している被毛に照射するとグリーンアップルに光ります。


2.)直接鏡検
 顕微鏡で直接被毛を観察し、菌糸や分節分生子を観察します。また、細胞診検査で分節分生子が見えることもあります。

↑つぶつぶが分節分生子。矢印が菌糸。

↑細胞診で観察されたつぶつぶした分節分生子。

3.)真菌培養検査
 感染した被毛を特殊な培地に植えて培養します。写真のように培地が黄色から赤色になれば陽性です。


○治療は?
・全身療法
皮膚糸状菌症は感染が皮膚の深部まで到達している場合も多いので抗真菌薬の内服による全身療法を行うことが多いです。継続のめやすは症状が消失し、2回連続で真菌培養が陰性となれば治療終了という指標があります。
・シャンプー療法
抗真菌薬含有のシャンプーを使用し感染被毛の除去を行います。
・外用薬
舐めにくい場所や狭い範囲であれば塗り薬を使用することもあります。
・毛刈り
感染拡大予防のために毛刈りをすることもあります。刈った毛で環境を汚染しないよう飛散させない工夫が必要です。

○感染防御・除菌について
皮膚糸状菌症に感染した場合は同居動物のチェックも行いましょう。
適切な隔離と治療を行わないと感染を繰り返すことになります。生活環境は下記の①から③の流れで週に1-2回洗浄しましょう。
①掃除機や拭き取りで物理的に除去。
②洗剤で徹底的に洗い流す。
③次亜塩素酸ナトリウム(10-100倍希釈)で消毒。
敷物などに感染毛やフケが大量に付着してしまった場合は廃棄をおすすめします。

発症するとどんどん広がる皮膚病ですので、フケや赤み、脱毛など気になる症状が現れた際には早めに受診してください。
特に仔猫ちゃんや高齢の猫さんにはかかりやすいので注意してくださいね。

獣医師 小谷