動物の眼科 第6回 眼球摘出術

泉南動物病院 眼科担当獣医師の伊原です。
今日は眼科特別診察を受診し、眼球摘出術をおこなった猫ちゃんのお話しです。
*今回も病気の眼の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください

【眼球摘出術とは?】
眼球とその周辺組織すべてを摘出する手術です。
眼球が拡張した末期の緑内障や、眼内の腫瘍、広範囲の眼球の外傷などで実施されます。

【症例紹介】
今日ご紹介する子は、2歳の猫のももちゃんです。
ももちゃんは生後数週間の頃に保護され、その時から重度のヘルペスウィルス性角結膜炎を患っていました。
その後角膜炎が悪化し、眼に大きな傷ができました。
傷は治りましたが、後遺症で角膜と虹彩が癒着し、失明しました。
写真は角膜の傷が治った時の写真です。虹彩が角膜に癒着しているので、黒目の部分がかなり小さくなっています。


2年後、左眼の色が変化し、拡大してきたとのことで眼科特別診察を受診されました。
左眼は右眼よりも拡大し、角膜が濁っているため、眼の中の構造が不鮮明でした。

超音波検査により、水晶体が無くなっていること、前眼房という部分に液体が溜まっていることが分かりました。

小さい頃に受傷した角膜潰瘍の影響で、眼の中の構造が変化し、眼房水という眼の中で循環している液体の流れが滞ったことが、眼球拡大の原因でした。
眼球が拡大すると、瞬目不全と言って、完全に眼を閉じることができなくなります。その影響で、角膜には小さな傷が出来ていました。

今後、眼球の拡大が続けば、角膜をさらに傷つける可能性があります。
また、腫瘍である可能性も考慮して、眼球摘出術を実施し、病理検査をおこなうことになりました。

(病理検査結果)
腫瘍の可能性はなく、眼の中の構造が変化したことによる緑内障

術後のももちゃんの様子です。
術後は少し手術部位が腫れています。数日間痛み止めを飲み、2週間程エリザベスカラーをつけて過ごしました。

術後70日目には毛も生えそろい、現在は不快感なく過ごしています。

【お知らせ】
当院では、どうぶつ眼科クリニックにお勤めの光本恭子先生による眼科特別診察を実施しています。
現在予定している日程は、2月27日(月)と3月30日(木)です。
眼科特別診察は、当院が初診の患者様でも受けることが出来ますので、まずはお電話でお問い合わせください。
 ➡眼科特別診察の紹介ページ

*緊急を要する症状の場合、事前に伊原の診察をお勧めすることがございます。ご了承ください。

獣医師 伊原