動物の眼科 第5回 角膜潰瘍・角膜穿孔

こんにちは。
泉南動物病院 眼科担当獣医師の伊原です。
今日は角膜潰瘍という病気のお話しです。
*今回は眼の病気の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください

【角膜潰瘍とは?】
黒目の上にある透明で薄い膜を角膜と呼びます。角膜潰瘍はこの膜に傷ができた状態です。
傷が深く、膜に穴が開いてしまうと角膜穿孔という状態になります。
角膜穿孔は特に痛みが激しく、失明する危険があります。

◆原因
外傷だけでなく、まつ毛やまぶたの異常、ドライアイや緑内障などの他の目の病気がきっかけとなって起こることもあります。
フレンチブルドックやシーズーなどの短頭種、チワワなどの目の大きい犬種は、目の露出部分が多く、角膜潰瘍を起こしやすいです。

◆症状
角膜には神経が多いため、傷つくと痛みが出ます。
・眩しそうに目を細める(しょぼしょぼさせる)
・片目を閉じている
・涙が多い
・白目の部分が赤くなる(充血)

◆治療
潰瘍が浅い場合、点眼薬による内科治療が主体となります。
細菌感染を防ぐための抗生剤点眼、角膜保護成分の点眼、角膜の治癒を促す血清点眼(自分の血液から作成した点眼薬)などが使用されます。

潰瘍が深い場合や、浅くてもなかなか治らないような場合には、以前にもブログでご紹介した動物用コンタクトレンズの着用や、外科的治療が必要となります。
眼をこすると悪化する危険性があるため、必要に応じてネッカーの着用を行います。

写真は、角膜穿孔を起こした18歳の猫ちゃんの目です。

来院時は痛みから食欲が落ちていました。
角膜が穿孔している部分からは眼の中の組織が一部飛び出しています。また眼球全体の炎症や感染がひどく、視力がない状態でした。
高齢であり、慢性腎臓病を患っていることから、今回は麻酔下での外科的治療を選択せず、点眼薬と鎮痛薬の内服による内科治療をおこないました。
ご家族が点眼治療を頑張ってくれたおかげで、食欲はすぐに回復し、2週間後には角膜の混濁が改善し始めました。4週間後には視覚が回復したことを確認できました。

角膜潰瘍は、軽症例では跡形もなくきれいに治ることが多いですが、角膜穿孔のような重症例では治っても白濁の跡が残ることがあります。
なるべくきれいに治し、視覚を保つためにも、早く治療を開始する必要があります。

【眼科特別診察のお知らせ】
当院では、どうぶつ眼科クリニックにお勤めの光本恭子先生による眼科特別診察を実施しています。
現在予定している日程は、 11月18日(金)、12月23日(金)です。
眼科特別診察は、当院が初診の患者様でも受けることが出来ますので、まずはお電話でお問い合わせください。
 ▶眼科特別診察の紹介ページ
*緊急を要する症状の場合、事前に伊原の診察をお勧めすることがございます。
ご了承ください。

獣医師 伊原