水遊びでは水中毒に注意!

今年は梅雨明けが早く、猛暑続きですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
暑い日が続くとプールや川、お庭での水遊びの機会が増えますが、その中で知らず知らずのうちに起こる危険性のある水中毒という病気について、お話したいと思います。

 

水中毒とは?

 

実際に水中毒という名前の病気はなく、正確には低ナトリウム血症という病態です。
身体の大部分は水分で構成されており、その中に電解質(イオン)が含まれています。そのうちのナトリウムイオンは、身体の水分量および浸透圧の調節、筋肉の収縮や神経の伝達など重要な働きをしています。
塩分の含まれていない水を短時間で大量に摂取することで血液中のナトリウム濃度が下がり、低ナトリウム血症を起こしてしまいます。
これによって筋肉や神経、様々な臓器に影響が及び、中毒症状がでるのが「水中毒」です。

 

どのぐらい飲んだら危ない?

 

犬の1日の水の摂取量の目安は体重1kgあたり50ml前後と言われており、体重1㎏あたり1日100ml以上の水(体重10㎏の犬で1リットル)を摂取すると低ナトリウム血症を起こす危険性があります。
健康な犬が自らの意思で中毒量の水を摂取するとは考えにくく、多くは水中のフェッチ遊び(投げた枝やおもちゃを咥えて戻ってくる遊び)で無意識に口から胃へ水が流れ込むことによって起こります。
また、ホースから出る水を口でキャッチしょうとする光景もよく見られますが、そのような場面でも無意識に大量の水を飲んでしまう可能性があります。

 

水中毒の症状と治療

 

・活動性の低下、ぼーっとする
・ふらつき、運動失調
・よだれ
・腹囲膨満(お腹が膨れる)
・吐き気、嘔吐
・歯茎など粘膜の色が薄くなる
・けいれん発作などの神経症状
・意識レベルの低下、昏睡

体内のナトリウム濃度が下がることで症状が出るため、治療は主にナトリウム濃度を補正するための点滴を行います。脳の浮腫が激しい場合には利尿剤を使用することもありますが、後遺症の危険性もあるため意識レベルやナトリウム濃度をモニタリングしながら慎重に治療していきます。

低ナトリウム血症の重症度によって症状が分かりにくいこともありますが、急速に進行し最悪の場合は命を落とす危険性もある病気です。様子を見ずに異常を感じた場合はすぐに受診しましょう。

 

水中毒を起こさないために

 

わんちゃんは楽しいといつまでも遊び続けてしまうため、飼い主が体調管理をしてあげないといけません。
遊びたがっていても15分に1回など定期的に休憩させて、しっかりと体調を観察してあげてください。

水中毒以外にも気温の高い日は熱中症、自然の中でのおでかけではノミ・マダニなど感染症にも注意する必要があります。
それぞれ過去のコラムがありますのでお出かけ前に一度ご覧ください。

獣医師 石田