柴犬のアトピー性皮膚炎 ~その2~

柴犬のアトピー・アレルギー、外耳炎などかゆい皮膚病の治療に力を入れている
泉南動物病院 皮膚科担当獣医師 横井愼一です。

さて、今日の症例は、
2歳の時から痒みが始まったアトピー性皮膚炎の柴犬 4才2ヶ月 女の子です。

・2歳のときより痒みが始まり、最初はアポキルも効いていたが、だんだん効果がなくなってきた。
・現在、抗生剤とアポキルを長期間服用しているが痒みが増している。
・最近食欲もなくなってきた。 とのことで来院されました。

KEY 

本症例のキーワード
・アポキルが効かない
・抗生剤が効かない
・食物アレルギー用のフードだけ食べているのに良くならない


治療前です。


アレルギーやアトピー性皮膚炎は対称的な症状が伴うのが一般的です。

目の周り、口の周りの脱毛と、色素沈着が見立ちますね。
痒みがひどいので、後ろ足で力を入れて掻いたり、
クッションに顔をこすりつけたりしているとのことでした。

この症例は、顔面は右、脇が左のほうに症状がひどく出ていました。
細菌や酵母菌であるマラセチアの二次感染が起きると、病変が非対称的になります。
脇はずっと掻いていることで、皮膚に厚みが出て象の肌のような皮膚に変化しています。
これを苔癬化(たいせんか)と言います。
さらに脇にはブドウ球菌という細菌の感染が認められました。
一般的にこの菌は抗生剤で改善するはずですが、
検査をしたところ薬剤耐性菌で一般的な抗生剤では効果のない菌に感染していました。


● 診 断 名 ●

食物アレルギー・アトピー性皮膚炎


<治療計画>
この子の脇のように、苔癬化をともなう肌の器質的な変化は、
元の皮膚に戻すのがとてもやっかいで、適切なスキンケアと外用薬が必要です。
マラセチアのエサとなる皮脂を取り除き、更に抗真菌剤でマラセチアをやっつけます。
その後の保湿でスキンケアをしつつ、かゆみをコントロールするためにステロイドの内服を使用します。
食物アレルギー用のフードの種類はたくさんあるので、違うタイプのフードを処方しました。

<治療後>
治療開始1ヶ月ほどで、顔や脇の部分の皮膚も元通りになり毛が生えました。


痒みがある間は、かなり神経質になっていましたが、痒みがなくなるともとの穏やかな性格に戻りました。
感染がコントロールされたので、長期間使用すると副作用のあるステロイドの内服を中止し、アポキルの投薬に変更しました。
アポキルは、全てのかゆみを止める万能薬ではなく、感染や痒くなる原因の食べ物を食べていると効果がありません。
写真は治療後3年目ですが、一度も悪化せず経過は順調です。

愛犬の痒みがなくなることで、ご家族も笑顔になる。

犬や猫の皮膚のかゆみ、脱毛症でお悩みの方は一度ご相談ください。

院長 横井