猫の変性性関節疾患
2025.10.14
こんにちは、獣医師の川口です。
今回は意外と多い猫の関節炎に関してお話したいなと思います。
<猫の関節炎とは?>
関節炎は色々な原因で発症しますが、今回お話しさせていただく関節炎は変形性関節症と言われる関節炎です。
一般に猫の変形性関節症は犬とは異なり、背景に素因が認められないことが多いとされます。つまり、特定の原因がないと言うことです。
しかし、急に突発的に発症すると言うものではなく、要因はいくつか挙げられます。
全身的要因として年齢、肥満、遺伝的素因、環境要因など、また局所的な要因として関節の外傷、不安定、過度の力学的ストレスなどが考えられています。
<実は身近に潜んでいる関節炎>
上記で要因の一つとして挙げました年齢についてお話しします。
日本国内での研究で、12歳以上の高齢猫の90%以上に変形性関節症が存在していると報告があり、また6歳以上の猫で約60%変形性関節症が存在していたと言う報告もあります。
猫は痛みや病気の症状を隠してしまう動物なので一緒に生活していてもわからない場合が多いです。
<猫の関節炎でよく発生する関節ランキング>
1位 肘関節
2位 膝関節、足根関節
3位 手根関節
4位 肩関節、股関節
<痛がっている時の症状>
上記で示した通り、猫は痛がっていることを隠してしまいます。しかし、完全には隠せず、日常の行動の変化として現れます。
・活動性の低下
▶よく寝る、あまり動かない、あまり遊ばない、狩をしないなど
・機動性の低下
▶ジャンプしようとすることがなくなる、高く飛べなくなる、トイレの使用が難しくなる、強張った歩き方をする、時に顕著な破行が見られる
・毛の状態が悪い
・グルーミングの頻度減少、時間短縮
・爪が伸びている
▶爪研ぎをしない
・性格の変化
▶人間や他のペットとの交わりを避け、一人になろうとする、機嫌が悪い
・他の症状
▶触れると攻撃したり、あるいは食欲が低下する
以上の行動が見られた場合は、絶対とは言えませんが関節炎が存在している可能性があります。
これらの行動は見られた場合、よく年のせいにされることが多いと思います。
しかし、関節炎は加齢に伴う変化ではありますが、病気の一種であること、治療を行うと痛みが軽減されることで猫にとってもQOL(生活の質)が向上すると思います。
<関節炎に対して何が必要?>
一緒に暮らしている愛猫の変化に気が付いても何をすればいいかわからないと思います。
①愛猫が標準体型でない場合は、まずダイエット(体重管理)をすることによって、関節にかかる負担を軽減するのが目的です。
②運動と環境の修正です。段差をなくすことで上り下りに生じる痛みをなくすのが目的です。
③疼痛管理です。痛みを軽減してあげることで活動性や機動性の向上を目的とします。
猫の関節保護のサプリメントに関する情報としてグルコサミン、コンドロイチン硫酸、クルクミン、アボカド不鹸化物、ヒアルロン酸を含むものが有効性をしますと報告があります。
しかし、痛みがひどく目に見えて痛そうにしている時や食欲が落ちてくる場合は、病院に来院してもらい消炎鎮痛剤や痛み止めにより管理することが必要になってきます。
猫の関節炎(変形性関節症)は早ければ6歳から存在し、12歳以上では90%以上の猫に存在しています。そして、存在はしていても関節炎の症状は一見老化に伴う行動として見られると言うことです。
気になる行動、症状がみられた場合は、動物病院にご相談ください。
獣医師 川口