犬の義眼手術について
2025.05.06
動物病院で先生から眼球摘出手術を提案されてショックを受けられる飼い主さんも少なくありません。
特に、ずっと見てきた愛犬の見た目が変わってしまうことへの不安は大きいと思います。
適応例は限られてしまいますが、実はワンちゃんにも義眼手術があります。
眼球摘出手術と異なり、眼球内側の組織のみを取り除くので術後の見た目は自然に近いものになります。
義眼手術ってどんな手術?
正式には強膜内シリコンインプラント挿入術(ISP)と呼ばれ、眼球内側の組織を取り除いた後に正常な目の大きさに合わせたシリコンボールを挿入し、強膜と結膜を縫合して自然な目の形を保つ手術になります。入院は1泊程度です。
シリコンボールは1mmごとにサイズがあります(Meni-One様サイトより)
義眼手術の適応は?
主に慢性緑内障の子が適応になります。
慢性緑内障は高い眼圧が続くことで視覚喪失してしまった状態で、眼球は徐々に大きくなり、痛みなどの不快感を伴うことも少なくありません。
義眼手術は視覚を回復することは出来ませんが、緑内障からの痛みを取り除き生活の質を改善してくれます。
術後は眼圧を下げる点眼薬も必要なくなります。
義眼手術の後に気をつけることは?
術後の合併症としては、角膜潰瘍やドライアイがあります。
眼球摘出手術と異なり眼の形を残すので、ぶつけると角膜に傷ができたり、細菌感染を起こす危険があります。
涙の量が減ってしまうドライアイになることもありますので、定期的な診察を受け、涙の量を測ったり傷ができていないかのチェックが必要になります。
義眼手術後の見た目
手術直後は眼の中に血液が溜まるので赤くなりますが、その後徐々に黒っぽくなり、最終的には灰色から黒色が混ざったような色になることが多いです。
下の画像は左眼の義眼手術から1週間経過した時のもので、ちょうど術後の血液がひいて黒くなっている時期です。この距離でみるとどちらの眼を手術したのか分からないくらいですね。
下の画像は更に2週間経過した頃で、角膜に血管が入り少し赤みが出ています。血管は徐々に退縮していきますが、2〜3ヶ月の間は色の変化があります。
最後に・・・
義眼手術は眼球摘出手術に比べると術後も合併症に注意したり、ケアが必要にはなりますが、外観の変化を最小限にでき、眼圧上昇からの痛みも解決してくれる有効な治療法になります。
細かい適応例や注意事項についてはワンちゃんの状態によって変わってきますので、義眼手術を治療の選択肢にお考えの場合はお気軽にご相談ください。
獣医師 光本