悲しいお知らせ

今日は皆さんに悲しい報告をしなくてはなりません。
10月24日午前4時25分 当院の院内犬のはぐが急逝いたしました。
6歳11か月でした。
死因は貧血および、心不全。
病気は心臓にできた血管肉腫という悪性腫瘍でした。

9月の中旬、若干の貧血が認められ心臓のエコーをしたところ、心嚢水(しんのうすい)が認められCT検査となりました。

<心嚢水(心タンポナーデ)イラスト>
(大塚駅前どうぶつ病院 心臓メディカルクリニックHPから引用)

診断結果は、血管肉腫でした。
血管肉腫は犬に発生する心臓腫瘍全体の約7割を占めます。
悪性度が極めて高く、肺、肝臓、脾臓および腎臓などに高率に転移します。ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバーに好発するとされています。
この病気は抗がん剤も効果はあまり期待できず、手術もできません。見つかってから長くても余命2か月とされています。
信頼している先生の診断ではありましたが、この病気の診断が合っているのか数人の腫瘍科医にセカンドオピニオンを求めました。しかし、結果は変わらずでした。
治療として抗がん剤の投与もありましたが、経験値の多い腫瘍内科の先生にアドバイスをいただきましたが、やはり抗がん剤はやめた方が良いとの結論に至りました。

その時、私がスタッフ全員にあてたLINEがこちら。

「はぐの家族代表として、彼の生活の質が落ちる状態で延命はして欲しくない。最後まで美味しくご飯を食べて欲しい。
そう考え、抗がん剤の治療はしない事にしました。今後の治療は心嚢水を抜くだけにします。
はぐをこよなく愛してくれている北島さん濱さんとも了解を得ました。
このまま、心嚢水が溜まるペースが続けばあともって1週間くらいかと思います。
もちろん大出血が起これば、いつ亡くなるかわからない状態です。
はぐと過ごす時間を大切にしてください。
できれば、はぐとは笑顔で接してください。   院長より」

残された治療としては、心臓に針を刺して心嚢水を定期的に抜く事しかありません。
診断が下った後、獣医師と愛玩動物看護師たちは皆で代わる代わる、はぐの心臓を朝晩エコーでチェックし、毎日200~300mlの心嚢水を抜いてくれました。
心嚢水が溜まると、血圧が下がり苦しくなりますが、抜いた後はいつものはぐに戻りました。
ごはんもいつも通り残さず食べ、おもちゃを鳴らして遊んだり、軽い散歩や、思い出のドッグカフェにも行けました。

(受付の北島さんと最後のお出掛けのドッグカフェにて)

1か月弱の間、スタッフにたくさん声がけして触ってもらい、休日のスタッフもしょっちゅう顔を出してくれました。
元々お腹が弱かったので、普段はもらえないようなおやつもたくさんもらいました。

(愛玩動物看護師の宮原さんからおやつをもらうはぐ)

しんどい時間もあったでしょうが、毎日、とても嬉しそうでした。
そして、私の願った通り、亡くなる数時間前まで美味しいものを口にすることができました。

最後の日はみんなに看取られ、苦しまずに虹の橋を渡りました。

(スタッフに囲まれているはぐ)

亡くなった後、トリマーの山城さんにエンゼルケアをしてもらい、とてもきれいな姿で旅立ちました。

はぐは医局でスタッフの皆を癒してくれ、命にかかわるような貧血で困った子たちに供血してくれるお仕事をしてくれていました。
彼のいない医局はとても寂しい空間になりました。

(医局のソファで眠るはぐ。私は、はぐのこのスタイルがお気に入りでした。)

動物病院という特殊な場所がおうちだった、はぐですが動物病院だからこそ、この1ヶ月を快適に過ごすことができたと思います。
毎日、はぐの治療に向き合ってくれた獣医師と愛玩動物看護師、
そして、たくさん可愛がってお世話をしてくれたスタッフの皆に感謝の気持ちでいっぱいです。

そして生前、はぐの事をかわいがっていただいた皆様には、本当に感謝いたします。
ありがとうございました。やっかいな病気だけに、彼に負担がかからないよう、公表は控えておりました。お許しください。

今は、向こうの世界で医局で一緒に過ごした、猫のきなこ、にゃじと仲良く遊んでいると思います。どうか安らかに。
はぐ、ありがとう。

(来た当時のはぐ)


(亡くなる数時間前)

院長 横井