耳👂科診察 -5.猫の炎症性ポリープと中耳炎-

今回は猫の中耳炎についてご紹介します。

豆大福ちゃん(現在1才3ヵ月齢)は仔猫の時から耳だれがあり、点耳薬を使って治療をしていました。
点耳薬をやめると耳だれはまた出てきてしまうような状況です。

6か月齢になり去勢手術をするときに、麻酔がかかった状態で細いカメラを入れて観察をしましたが、耳の中にポリープができていました。

これは炎症性ポリープといって、中耳の炎症により粘膜がポリープ状になり、鼓膜を穿孔して外耳道にでてきたと考えられます。

まずは数か月間、抗生剤での治療を行い、その後麻酔をかけてCTでの精査とオトスコープでの中耳の洗浄治療を行うこととなりました。

CT検査では中耳腔の中には膿がたまっているのが分かりました。程度の左右差はありますが、両耳の中耳炎です。

オトスコープで観察すると、抗生剤治療によりポリープは消失していることが分かりました。

↑鼓膜の状態。本来透明な鼓膜は白くもやもやしています。

中耳炎の治療は中耳の中の膿を出してしっかり洗浄することが必要ですので、鼓膜に小さな穴をあけてカテーテルを挿入し、洗浄を行いました。

↑鼓膜穿刺をしてカテーテルから膿を排出しているところ。

中耳の中まできれいに洗浄して処置は終了です。

その後数か月間抗生剤や抗炎症薬も服用を続けてもらい、経過は良好だったのでお薬をやめ、今は再発なく経過観察をしています。

中耳炎を治療してから耳の通りがよくなり、今まで聞こえなかった音にも反応するようになりました。
おどろくことに、声の出もよくなり、かわいく高い声が出せる様になりました。

猫の中耳炎は進行していくと神経の方にまで炎症がすすみ、捻転斜頸(首が傾く)や顔面神経麻痺といった症状が現れ、食欲がなくなり、さらに脳炎へと進行する可能性もある病気です。
そして初期には気づきにくいこともあります。

今回、豆大福ちゃんは幸い、早期に発見することができ、お薬でポリープをちらすこともできました。
耳を痒がる様子や耳だれなどが続く場合は早めに受診してくださいね🐱

獣医師 小谷