アポキル、サイトポイントも効かないアトピー性皮膚炎にマラセチア皮膚炎を併発したシーズー

シーズーのアトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、外耳炎など、かゆい皮膚病の治療に力を入れている泉南動物病院 皮膚科担当獣医師の横井愼一です。
今回は、一番難しいとされるシーズーのアトピー性皮膚炎についてお話ししたいと思います。

 

症例

4~5年前から、痒みがあり、かかりつけ医で処方食やステロイド、抗真菌剤を与えるが、徐々に悪化。アポキルや、月1回のサイトポイント注射も最初は効果があったが、今は全く効いていないとの事で来院されました。

痒みがひどいため、エリザベスカラーを1年以上つけっぱなしにしているとの事でした。
当院に来院時は、慢性的な全身の痒みがあり、脂でベタベタしており、フケもたくさん出ていました。
特に胸からお腹は真っ赤に腫れていました。外耳炎も認められ、耳道は腫れて狭くなっていました。
皮膚の赤いところからは、マラセチアが大量に検出されました。

(1)腹部
フケと皮脂が認められベタベタして、すっぱい臭いがします。

腹部毛刈り後

(2)頸部


(3)脇


(4)耳
耳は腫れがひどく、外耳道が塞がれていました。


(5)四肢の指の間
赤く腫れています。

前肢毛刈り後

 

今回のポイント

シーズーという犬種
シーズーの原産はチベットです。
チベットとは中国の西に存在し、人々の大半は標高200メートルから3600メートルに住み、気候は非常に乾燥しています。
そんな場所が原産国のため、シーズーは乾燥から身を守るために、生れつき他の犬種と比べて皮脂がたくさん皮膚から分泌されます。これを脂漏症といいます。

マラセチアが感染

マラセチアは皮膚に常在する真菌の一種です。
耳や口の周り、肛門回りに多く存在し、通常量存在する場合は痒くなりません。
やっかいなことに真菌の1種であるマラセチアは、この皮脂のべたべたが大好きでそれが栄養となりその場所で増殖すると、痒みが激しくなります。

アトピー性皮膚炎
アポキルやサイトポイントは副作用がほぼない、アトピー性皮膚炎には大変よく効くかゆみ止めですが、皮脂で増殖するマラセチアの管理ができていないと効果が認められないことがあります。

 

診断名

マラセチア皮膚炎を伴うアトピー性皮膚炎

 

治療後

治療開始から1年後です。

<頸部>


<腹部>


<耳>


<四肢の指の間>


皮脂をコントロールすることができ、ベタベタやフケがなくなりました。
また、慢性的な皮膚炎でおこる色素沈着もきれいになりました。
適切な投薬やスキンケアをすることで皮脂の分泌を正常化し、炎症の改善を認めました。
もつれていた毛もサラサラ、ふわふわになりました。

 

治療のポイント

犬アトピー性皮膚炎の中で、一番管理が厄介なのがこのマラセチア皮膚炎のある脂漏体質のシーズーの症例です。これらの症例はスキンケアとして、その子に応じて皮脂がコントロールできるような、クレンジングやシャンプー、保湿剤などの選択と回数を探ります。それに加えて副作用が出ないようステロイドの内服、外用や免疫抑制剤を上手に組み合わせて、いかにこの体質とうまくつきあうか、ご家族と一緒に考えていくことが大切だと考えています。

皮膚科担当獣医師 横井愼一