ポメラニアンの脱毛症X

アレルギー・アトピー性皮膚炎だけでなく、脱毛症の治療にも力を入れている泉南動物病院の皮膚科担当獣医師、横井愼一です。
さて、今日は脱毛症での診察が多いポメラニアンの脱毛症を紹介します。

 

症例

ポメラニアン 8歳 去勢済みオス

 

来院理由

この子は数年前から徐々に脱毛が始まり、写真のようにすっかり体全体の毛が薄くなってしまったとの事で来院しました。


(左:おなか 右:背中)

特に首の部分には全く毛がありません。
このような痒みのない脱毛症で疑われるのは、ホルモンのバランスが崩れて起こることが一般的ですが、ポメラニアンの脱毛症で一番多いのはアロペシアX(脱毛症X)です。
この病気は、毛の生え変わるサイクルが止まってしまうことによって脱毛することがわかっていますが、根本の原因はよくわかっていません。
特にポメラニアンをはじめとする北欧犬種(シベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなど)がこの病気にかかりやすいといわれています。
症状は体幹部の脱毛が主で、頭や四肢には脱毛は起こりません。
また、健康状態に問題が出ることはありません。

 

本症例のキーワード

・元気食欲あり
・各検査に異常なし
・ポメラニアン

 

診断名

アロペシアX(脱毛症X)

 

治療

・栄養価の高いフードへの変更
・サプリメント
・自宅での炭酸泉

治療3年後の現在と比較写真です。



治療開始直後から発毛は認められ、やっと3年かけてここまで毛が増えました。
残念ながら、まだお尻と尻尾は綺麗に生えそろっていませんが、ご家族には大変喜んでいただいています。
この病気は、毛が生えたら治療終了とはいかず、現在もサプリメントの投与と自宅でのスキンケアは欠かさず毎日継続が必要です。
美容上だけの問題と考えがちですが、ご家族にとっては容姿も非常に気になる点ではないでしょうか。
個体差があり、すべての症例でこのように発毛が認められるわけではありませんが、特にポメラニアンの場合は、少しでも毛量に異常を感じたら早めに受診されることをお勧めします。

皮膚科担当獣医師 横井