せんなん奮闘記 vol.4 急患対応〜輸血編〜


奮闘記も第4回となりました。日々奮闘で、ネタがまったく尽きません!
今回は病院で働いている以上逃げられない急患対応、その中の“輸血”についてです。

 

人医療との違い
現時点で動物医療には血液バンクが存在しません。
多くの動物病院ではドナー登録制度を設け、輸血が必要となるたびドナー犬に献血をしてもらっています。

当院1年間の輸血回数(2020.9〜2021.9)
・年間輸血回数 ― 21回   
・輸血回数/頭 ― 1~3回
・ドナー登録数 ― 16頭

 

奮闘その① 貧血の急患が来院!

歯茎の色が正常よりも白いと貧血状態の可能性が高く、救急度が高いため優先して検査・処置に移ります。
血液検査で貧血の程度や凝固系(血液が本来の働きができているか)を確認したら、動物の状態が許容する範囲で画像検査を行い原因を探ります。

貧血は原因の病気そのものではなく症状の一つで、輸血は一時的な時間かせぎです。
血が足りない状態では酸素を全身に運ぶことが出来ず、原因の治療を行う前に脳へのダメージや多臓器不全をもたらし生命を脅かします
一刻を争う状態であり、輸血を行って全身状態を少しでも改善することが最優先となります。

 

奮闘その② ドナー犬探し
輸血実施が決まればすぐにドナー登録犬に協力要請の電話をしていきます。
ドナー犬は前回の輸血から3ヶ月は期間が空いていることや、必要血液量と献血可能量を考慮して選びます。
来院していただけるドナー犬が見つかったら、到着までに輸血の準備を済ませます。

 

奮闘その③ 集中ケア
ドナー犬探しと並行して、輸血が必要な動物はICU(酸素室)で集中ケアを開始します。
担当獣医の他に担当看護師が必ず1人つき、意識レベルの変化、酸素は足りているか、血圧は保てているか、バイタルチェックなどを15〜30分ごとに定時モニタリングします。

  <ご面会>
当院ではICUに入った時点で一度ご家族にご面会をしていただいています。
体はとてもしんどいはずなのにご家族に会ってしっぽを振ったり、撫でてもらって緊張がやわらぐ様子が多く見られます。

  <ドナー犬が到着したら>
ドナー犬の検診と、ドナー犬と輸血を受ける犬の血液適合検査を行い、問題無ければ採血に移ります。

 

奮闘その④ 副反応への集中ケア
ドナー犬の採血が終わるとすぐに輸血を開始します。

(「かんさい情報ネットten.」で当院が取り上げられた時のものです)

副反応を最小限に抑えるため少量から開始し、呼吸数や体温をモニタリングしながら10分ごとに増量していきます。
様々なリスクを考慮し、長くとも4時間以内で輸血が終了するよう設定します。
輸血による治療の反応や全身状態を見ながら、輸血後の治療方針をご家族と相談します。

 

みんなで奮闘
状況にもよりますが、来院してからうまくドナー犬が見つかった場合でも輸血開始までは最短で3時間ほどかかります。
その間動物は検査や処置を、ご家族は不安な中待つことを、そして急な連絡にも関わらずかけつけてくれるドナー登録犬やはぐちゃん、みんなが奮闘しています。
その中で私たちは、急患の来院時はもちろん、輸血開始までの時間を少しでも短縮できるよう日頃から手技を磨いたり知識を詰め込んで日々奮闘しています。

 

ご家族からの声


動物看護師 道下