せんなん通信

わんちゃんの乳腺腫瘍のお話

2018.06.02

◇乳腺腫瘍とは?

乳腺腫瘍とは、乳腺の一部が腫瘍となってしこりができる病気です。
一般的に乳腺腫瘍は中高齢の雌でみられ、わんちゃんの場合、胸の方からお腹の方まで乳腺が発達しているため、様々な場所に乳腺腫瘍ができます。
乳腺腫瘍には大きく分けて、「良性(転移しない)」と「悪性(転移し、命に関わる可能性がある)」があり、体格にもよりますが、わんちゃんの乳腺腫瘍の50%~70%は良性です。また、悪性であってもすべてが転移し、命に関わるわけではありません。
すなわち、乳腺腫瘍の多くは、治療すれば治すことができますが、一部の乳腺腫瘍は治療を行ったとしても治すことができず、最終的には乳腺腫瘍が原因で亡くなってしまいます。

◇乳腺腫瘍の原因

乳腺腫瘍の発生には、女性ホルモンが関係していると考えられています。
乳腺腫瘍の発生率
・1回目の生理がくる前に避妊手術(卵巣と子宮をとる手術)を行った場合:0.5%(200頭に1頭)
・2回目の生理がくる前に避妊手術を行った場合:8%(12頭に1頭)
・2回目の生理以降に避妊手術を行った場合あるいは避妊手術を行っていない場合:26%(4頭に1頭)。
以上のように、わんちゃんの乳腺腫瘍は、数少ない予防可能な腫瘍といえます。

◇乳腺腫瘍が見つかったら?

乳腺腫瘍が見つかった場合、以下のことをご家族に知ってもらう必要があります。
・手術で腫瘍を取り除く必要があること。
 (すでに転移している場合などの例外を除きます。)
・病理検査をするまでは、良性なのか悪性なのか分からないこと。
 (腫瘍の大きさや成長の早さ、転移の有無などである程度予測はできます。)
・良性であっても、放置しておくと、悪性になる可能性があること。
・一つだけでなく、複数の乳腺腫瘍が見つかる可能性があり、すべてが同じ病理診断とは限らないこと。
・腫瘍を切除しても将来的に別の場所に新たな乳腺腫瘍ができる可能性があること。
 (同時に避妊手術をすることで、良性乳腺腫瘍に関しては、新たな乳腺腫瘍の発生率を下げることができます。)
以上のことをふまえてその子にあった治療をご家族と一緒に考えていく必要があります。

◇乳腺腫瘍を早めに見つけるためには?

最初に述べたように、乳腺腫瘍は胸の方からお腹の方まであるため、普段は気づきにくいです。
乳腺腫瘍に早めに気づくためには、下の写真に示すようにわんちゃんにばんざいしてもらったり、あおむけになってもらったりして、しこりがないか確認しましょう。
しこりが小さかったり、毛が生えていると見逃すことがありますので、胸のほうからお腹の方まで触ってあげるとより見つけやすいです。
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◇まとめ

今回は、わんちゃんの乳腺腫瘍のお話でしたが、いかがでしたでしょうか?
乳腺腫瘍と一口にいっても、良性のもの、悪性のもの、中には転移するものもあり、わんちゃんの乳腺腫瘍は複雑ですし、治療もその子その子によって違います。
当院では、その子にあった治療を分かりやすく、ご説明いたします。
胸やお腹にしこりがあり、1回目の生理がきたあとに避妊をした、あるいはまだ避妊をしていない場合は、乳腺腫瘍の可能性が高いので、その場合はご相談していただければと思います。

◇おまけ

少し先になりますが、7月7日・8日に東京で日本獣医がん学会が開催されます。
毎年夏は東京で、冬は大阪で開催される大きな学会ですが、今回は、抗がん剤の副作用をテーマにした講演があります。
抗がん剤を行ううえで、副作用が気になるご家族もたくさんいらっしゃると思いますので、ご家族に適切なアドバイスができるようしっかり勉強してきたいと思います。

獣医師 伊藤

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