せんなん通信

短頭種気道症候群

2017.10.25

パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアなどの短頭種は、骨や軟骨、その他の構造が特徴的な形をしているため、鼻やのど、気管に異常が発生することが多く、それらを短頭種気道症候群と呼びます。

 

遺伝的に起こる形の異常のうち、『鼻腔狭窄』『軟口蓋過長』の二つがよく認められます。鼻腔狭窄は写真のように鼻の穴が線状に狭くなって空気が通りにくい状態のことで、見た目と鼻息が通っているかどうかで判断します。

短頭腫

また、軟口蓋過長は喉の奥の柔らかい部分が通常より長く、気管の入り口にかかっていることで空気が通りにくい状態をいいます。いびき・喘鳴音(ガーガーという呼吸音)があると軟口蓋過長があると考えられます。

短頭腫2

このような異常により空気が通りにくくなることで、一生懸命息を吸おうとし、さらにのどや気管に二次的な異常が起こり、呼吸困難などが重症化します。

 

症状は呼吸困難の他に、咳、チアノーゼ(酸素が足りず舌が青くなる)、失神・虚脱、体温上昇による熱中症、えずき・嘔吐などがみられ、命にかかわることもあります。

 

手術しない場合、体重を管理して肥満を抑えること、環境管理や鎮静薬による興奮のコントロール、抗炎症薬による喉の炎症抑制などで治療します。ただし、根本治療ではないため、改善が認められなかったり、悪化する可能性があります。

 

手術により鼻孔狭窄、軟口蓋過長を整復しておくことで、このような症状や二次的な形態異常を防ぐことができます。

 

鼻孔狭窄の整復は鼻の一部をほんの少し切り取り、縫い合わせることで鼻の穴を広げます。糸は溶けるものを使用するため、抜糸はありません。手術前後でこの程度拡張することができます。

短頭腫3

 

フレンチブルドッグのハリーくん(1歳)はお散歩時に呼吸が苦しくなり、チアノーゼが出たため来院されました。ガーガーという呼吸音から軟口蓋過長があると判断し、去勢手術もまだだったので、軟口蓋切除術と去勢手術を行いました。

短頭腫4

ハリーくん

ちなみに、ハリーくんの鼻孔はこのように普通よりは少し狭いですが、手術は必要ない程だったのでしていません。

 

さて、軟口蓋切除の様子ですが

下の写真の矢印で指している部分が軟口蓋で、気管に入れている管に当たっています。

 

 

短頭腫5

これを引き出してみると、

短頭腫6

こんなにあります!(白矢印)これが気管の入り口を邪魔してしまい、空気の通りが悪くなってしまいます。

 

軟口蓋の切除はCO2レーザーを使用します。CO2レーザーで焼きながら切ることで出血が少なく、早く終わることができます。

切除後の写真がこちら。1.5cm程切除し、気管の入り口を邪魔しなくなりました。

短頭腫7

この手術自体は30分程度で終わり、当日に帰ることができます。

術後5日目、ガーガーという呼吸音はかなり改善し、ハリーくんはとても元気です。

短頭腫8

短頭種で小さい時から鼻腔狭窄や軟口蓋過長があると思われる場合、避妊、去勢手術と同時に整復しておくのが最も効果的です。大きくなってから手術する場合は、小さいころに手術するよりも改善しにくいこともあります。

鼻孔狭窄や軟口蓋過長に対して早期に処置してあげることで、苦しい目に遭わなくて済むかもしれません。鼻の穴が狭い、いびきやガーガーという呼吸音に心当たりのある方、ぜひ一度ご相談下さい!

 

獣医師 沖田

PAGE TOP ↑